4)農業関係者の意識
(a)土地利用や農作業に関すること
「水路はコンクリートでなきゃダメだ。でも孫にはホタルを見せてあげたい」ある農民がこんな話をした。
矛盾しているようだが、これが今の農家の本音ではないのだろうか。
農民自身、身近な環境の変化は気づいている。しかしいまだに効率性を優先し、そこから出ようとはしない。片手間な農業が主流であるから考えようともしないのか、あるいはどうすればいいのかわからないのかもしれない。二種兼業が多くなり、村の若者殆どがサラリーマンである。指導された通り稲作を行えばまず普通に米がとれる。稲作を自分なりに研究して作業する人はわずかである。農村の昼間は老人だけとなり、70歳を過ぎてもまだ現役の農民を強いられる。しかし後10年も経たずにこの現役達はリタイアせざるを得ない。こうなった時、農村はどのような変化を見せるのだろうか。農業技術の死は、後継農業技術のレベルの低下をもたらし農産物の質と量に大きく影響するだろう。また人口の減少が均等な年齢構成を崩ずし、今の社会組織は機能しなくなるだろう。思い切った発想の転換が求められている時代である。
こんな状況下でも農政は「中山間地域直接支払制度」や「農地・水・環境保全向上対策」などの施策を設け、集落マスタープランあるいは地域ビジョンなる物を作成させようとしているが、農民自らが将来を憂えて考えると言うよりは助成金をもらうためプランなりビジョンになってしまっているような気がする。これらの施策には必ずメニューがあって、それに助成金額が付随している。このメニューから外れないように、目の前にニンジンをぶら下げて走らせようとしているわけである。「お前達は何も考えなくていい」ということなのだろうか。
それが本来の農業のあり方であるわけがない。そう考える時間を与えないかのように転作をさせ検査をする。農民は検査に間に合わせるように農作業を強いられる。検査が通らなければ、集落全体に入った補助金を返還させられる連帯責任を負わされる。まるで江戸時代の年貢取締りのような気がしてしょうがない。
こんな中で風景にはどんな影響がでるのかを見てみたい。

●伊手川下流にある起伏堰 ●ため池の放棄
・ここには魚道がないため、上流の生態系が変わってしまった。 ・川やダムから水が安定して確保されるようになるとため池は放棄されてしまった。
水田で暮らせなくなった生き物の逃げ場所が無くなってしまった。

●水田景観の変化
・除草剤使用の変化により水田雑草が目立つようになってきた。
(マコモ・ヒエ・イグサなど)
老齢化が進む中にあって、農作業の軽減化が求められるようになってきた。特に中山間地では段々田が多く、畦畔は大きな法面を抱えているため草刈りが重労働となっている。この労働の軽減と、カメムシなどの害虫を寄せ付けないことや花の綺麗な種を用いて景観を良くしようという意味合いから畦畔のグランドカバー植栽が行われ始めている。ただこれらの植物は、生物多様性や生態系を考えると以下の点でいまだ問題が払拭できていないと思われる。
@生息地若しくは生育地または餌動植物に係わる在来生物との競合による在来生物の駆逐
A植生の破壊や変質等を介した生態系基盤の損壊
B交雑による遺伝的攪乱
水田畦畔は一枚の田んぼでは小さいかも知れないが地域全体で見れば大面積となる。それを単純な植生にしてしまうことが果たしていいことなのだろうか。またアレロパシーを持つ種を利用することが多いが、害虫だけでなく益虫をも寄せ付けないことになってしまわないかなど検討する余地は残されていると思われる。

●イブキジャコウソウの試験例(岩手県農業研究センター内) ●イブキジャコウソウの花

●センチピードグラスの試験例(青森県外ヶ浜町)
●ヒメイワダレソウ
●岩手県奥州市江刺区原体地区の例
斜面に除草剤を散布し既存の草を全て除去した後、シートで斜面を覆い雑草の侵入を防ぎながら植栽したもの。ヒメイワダレソウの被服土は早いが、シートが消滅する物ではないので株が増えることがない。この工法はシートで除草しているものあって、植物は飾りとなっている。皮肉なことに、シートの下はネズミの巣になっているとの話もある。工法の失敗ではないかと思われる。
●ヒメイワダレソウの株を引っ張ってみると、絨毯みたいにめくり上がった。
(b)社会組織に関すること
農村社会には様々な組織が存在する。行政組織、振興会及び自治会組織、農協組織、消防などの自治組織などがそれある。これらが円滑に活動されることによって農村の社会はうまく成り立つのである。しかし少子高齢化が社会組織の活動を脅かしている。
もともと限られた人口の中で、多層構造による多数の役をまわり順にこなしてきていたのであるが、人口減少や高齢化による社会組織参加の不可が益々40代〜50代の負担を増大させている。また、逆ピラミッドの人口構成であるため地区に不在の年代が生じ、スポーツ行事などを棄権する自治会が出てきている。消防団では入団者の確保に苦労している一方、平日昼間には団員の殆どがサラリーマンなので不在となり、火災が発生した時の対応が問題となっている。

●卓球大会(左)と自治会対抗地区内一周駅伝(右)の例。
年間を通じて5〜6回スポーツ行事は行われている。年代別の出場条件が多いため棄権する自治会も出ている。これは出場資格に、地区に居住する者との縛りがあるためである。地区の出身者や縁故者などの出場を認めればこんな問題が発生せず、地区のファンづくりに役立つと思うのだが体協の対応は今ひとつである。
●消防演習の様子
農村の社会組織については農村の実状に合わせて柔軟に対応すべきである。婦人会とJA婦人部など似たような組織の合併や軍人恩給の組織など役割の終わった組織は解散していいはずなのだが
「言うことはもっともだが、私が役員のうちは変えない」
という人が多い。後々他人から言われることが怖いのかも知れないが、この考えで行けば何も変わらないことになる。
限界集落になってからでは遅いので、早急に変革をしなければ成らないと思う。
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