2)農業技術の変化
  稲作の栽培技術は効率化、省力化を求めて大きく変化している。それは大型機械化や水路のパイプライン化などに見られる。また、環境問題が叫ばれる中稲作も減農薬・減化学肥料栽培が徹底されるようになり、肥培管理や雑草除去、病害虫除去の指導がなされるようになった。しかし、兼業農家が多数を占める状況下では、いまだに農薬と化学肥料に頼らざるを得ないのが実状である。
ある農協の指導内容(抜粋)を見ると以下の様になっている。
 @肥培管理
  ・22種類の基肥と堆肥の組み合わせによる土作り
 A雑草防除
  ・クロ塗りなどによる農薬等の流出防止
  ・代かきと田植えまでの期間を4日以内にする
  ・除草剤散布  1回または2回実施
      田植え後10日以内
      田植え後55日以内
  除草剤は以前に比べ残留農薬の少ない物や、ピンポイントで目的の雑草だけに効果がある物に変化してきている。散布量も少なくなっていて10a当たり3kg/袋だったものが1kg/袋が殆どである。
 B病害虫防除
  ・出穂2週間前までに畦畔雑草の刈り取り除去
  ・薬剤散布
      葉いもち病    苗箱散布
      穂いもち病    直接散布
      カメムシ      薬を変えて2回散布



  

 この写真は収穫前の田んぼである。これが今の農村の姿をよく現しているのだが、この写真を見てどのような感想を持たれただろうか。
 のどかな田園風景と映っただろうか。
 稲穂の上にチョキンと突き出た葉は止め葉と呼んでいるのだが、稲の一番最後に出る葉である。例年であればこの葉の先はイナゴに食われているのが普通だった。食痕がないということは、田んぼにイナゴが全くいないのだ。この田んぼだけでなく作付けしている田んぼには全くいない。それではイナゴは全滅したのかというとそうではない。牧草転作田にかろうじて生息している。数十年と農薬散布を続けてきた結果がこの風景から読み取れるのだ。

 
これだけではない。調査したわけではないので確実性に欠けるが、30年以上暮らしていて感じていることを述べさせてもらうと次のことが言える。
 @水田の中にいる昆虫類が減少
  ・一時的水生生物の生息場所が悪化したため、トンボ、ゲンゴロウ、タイコウチなど昆虫を捕獲する昆虫が減少。
   これは必要なときだけ水を入れる栽培管理から来る問題が大きいだろう。
  ・バッタ類は十数年全く見ていない。
  ・クモ類が減少。




 
Aハチやハナアブ類の減少
  ・クマバチやハナアブ類が減少したため、カボチャやスイカなどが受粉できず人工授粉をする人も出てきた。
  ・アシナガバチの減少
  ・ツチスガリはやはり10年以上見ていない。
逆に農薬が使われなくなった転作田には思わぬ変化もある。
 B管理の悪い牧草転作田にヒョウモンチョウ類が見られるようになった。


      

 かつて生き物のワンダーランドと呼ばれた水田は、水田管理の影響や農薬によって大きな変化を余儀なくされている。このことよって食物連鎖が壊され、これまで問題視されてこなかったカメムシなどの新たな害虫が大量に発生し米に被害を及ぼしている。これに対しても農薬散布で対応するという旧態依然とした対策しかとられていないのが実状である。




 3)土地改良
 
農業技術は機械化を伴い大規模な土地改変も行ってきた。土地を改変すればするほど、便利にすればするほど農村の生き物は希薄になっていく。

     

 水路のパイプライン化はそれまでの植生や昆虫の生息に大きなダメージを与えたことが予想される。
 

      

 9月中旬から4月中旬まで水路には水が流れない。これが水棲生物たちの生息を奪っている。
ある場所で生き物調査を行ったが、5科14種が生息していた。川と繋がっている水路ではコイ科の魚が出現したが、それ以外は殆どがドジョウだった。

     
 
かろうじて水が残っている所にはドジョウが大量に生息している。
      
マシジミはコンクリート桝の砂の中に生息していた。             コンクリート桝
 
川と繋がっているところにはコイ科の魚がいた。






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